前作の『キミがこの本を買ったワケ』の続編。
今回は、「マスコミが取り上げない、際立った個性のない大多数の人たち」である「透明人間」=「サイレント・マジョリティ」について書かれています。
実は、市場を動かしている本当の正体は「透明人間」なのです。
※本の中では、前作よりさらに自画自賛的な内容も多くなっていますので、その点は華麗にスルーして読んでください。
透明人間の買いもの 目次
- 透明人間は、最近の宮崎駿は正直微妙と思っている
- 透明人間は、衣替えの前日、友人たちに電話する
- 透明人間は、関ジャニ∞より本当は木村拓哉が好き
- 透明人間は、もう何年もシングルCDを買っていない
- 透明人間は、お一人様レストランも岩盤浴も行ったことがない
- 透明人間がレストランで注文するメニューは、「私も」である
- 透明人間のスケジュールは、いとも簡単に上書きされる
- 透明人間は、大河ドラマの主役に興味ない
- 透明人間は、今の宮沢りえを別人だと思っている
- 透明人間は、ビリーズブートキャンプをまだ開封していない
- テレビの登場前、透明人間はテレビを見たいとは思わなかった
- 好感度調査で、所ジョージが上位にランクされるのは透明人間の消極的理由
- 透明人間は、普段着は迷わずユニクロで買う
- 透明人間は、妻夫木聡と蒼井優に自分を重ねる
- 透明人間は、カリスマシェフの料理より、評判のレシピで作ったほうが好き
- 透明人間は、横浜、ロッテ、日ハムのファンを渡り歩いた
- 透明人間は骨折すると、TSUTAYAに行けない
- 透明人間は間一髪、電車に乗り遅れる
- 有名人が透明人間に支持されるのは平均4、5年
- 透明人間は、ディズニーランドとビートルズが好き
世の中は「透明人間」が圧倒的多数
この本にある「透明人間」ではない人とは、どのような人でしょうか。
透明人間とは? –その質問に答える前に、透明人間じゃない人たちを何人か挙げてみよう。
- アフターファイブにお一人様レストランに行くOL。
- プチ家出して渋谷に一週間寝泊まりする女子高生。
- ネットカフェ難民。
- 成田空港に韓流スターを見に行く主婦。
- 夏休みに入って最初の日曜日に湘南に出掛ける家族連れ。
–ほら、テレビや雑誌に頻繁に登場する彼ら。でも、あなたの身近に彼らのような人たちって実際にいます?
多分、いない。なぜなら彼らは際立った個性でマスコミに取り上げられるけど、その実態は極めて少数派だからである。
「あなたたちがテレビや雑誌などで、『この人たちがメジャーですよ』と祭り上げまくってきたんじゃないの?」とツッコミたくなるけど、著者たちはそのことをちゃんと知っていて仕掛けてきたんだと思います。
テレビや雑誌で取り上げられる人たちは、ごく一部の人たちなのです。
「新丸ビル」ができた時、アヤパンも「丸ビル」に行ったことがなかった
本の中で、めざましテレビで丸の内の「新丸ビル」の内覧会のニュースが報じられていた時、キャスターの大塚さんが『また、丸の内に1つ名物が増えましたね』というコメントをした時、フジテレビの人気女子アナウンサーである高島彩アナが
「でも私、まだ丸ビルにも行ってないんです」
とコメントしたそうです。
女子アナといえば、華やかな職業のイメージで、流行もいち早く察知し、各業界のトップの方々との交流も多い、などのイメージがありますが、実は「丸ビルにも行ったことない」という圧倒的多数の人と同じである」という事実が分かったのは凄いことでした。
これと同じように、テレビや雑誌で出てくる、「岩盤浴に通う」、「お一人様レストランに行く」、「ブランドもののファッションに身を包む」、「『働きマン』としてバリバリ仕事もプライベートもガンバる」という女性は圧倒的に少ない、ということです。
「ブロガー」も透明人間ではない方の人
『透明人間は、大河ドラマの主役に興味ない』という章にて、『ブログの書き込みは、声の大きな人々』という項目があります。
あるテレビ番組で、ゲストに男性グループを呼んだとき、番組のBBSへの書き込みが10倍となり「これはイケる!」と思ったプロデューサーがその男性グループをレギュラーにしたところ、番組の視聴率は落ちていき、最終的には打ち切られてしまった、というエピソードがあるそうです。
このエピソードにあるBBSの書き込みを行っていたのは「ごく一部の熱烈なファン」で、ファンではない視聴者数が圧倒的に多かったのです。
このようにBBSに書き込みをしたり、ブログを書いたりするのは、どちらかというと「透明人間ではない人」であり、圧倒的多数の人はBBSの書き込みやブログの記事は「読むだけ」、もしくは「見向きもしない」人たちです。
しかし、書き込みをしない、ブログを書かないといって、自分の意見がないわけではありません。番組が好きならみるし、嫌いなら見ない、という行動はブロガーと同じように行います。むしろ、人数としては圧倒的に多いので、BBSの書き込みやブログなどの「一部の声」に惑わされて、その人たちだけに好まれる方向に進んでいくと、圧倒的多数からは見放されてしまうことにもなります。
「透明人間」をターゲットにする
「ポリンキー」や「バザールでゴザール」などのCMを手がけられた佐藤雅彦さんが、CMプランナー時代に雑誌「宣伝会議」の記事にて、以下のようなやりとりをよくされていたと書かれています。
営業「この商品のターゲット、誰にしましょうか」
マーケ「20代前半の独身男性に絞りましょう」
佐藤「ちょっと待ってください。もっと広い層ではいけないんですか」
これが佐藤さんのいわれるターゲットを「みんな」にすることであり、『(僕が興味を持っていることは)年代や性別や職業の枠を超えて、みんなが喜ぶ商品や表現です』と書かれています。
あわせて、「ディズニーランド」は「みんな」がターゲットであり、「ビートルズ」は老若男女が聴いていることを例として挙げられています。
では、どのようにして「みんな」をターゲットにするイメージを作れば良いのでしょうか。
そのヒントの一つとして「マジカル頭脳パワー!!」や「エンタの神様」などを手がけられている五味一男プロデューサーが自身の著書『ヒット率99%の超理論』にて書かれている方法があるそうです。
「自分の頭の中に、1000万人を住まわせる」
用は、子供から年配者まで、あらゆる年代の最大公約数的感覚を自分の中に持つこと。ネットに書き込む声の大きな人たちばかりでなく、その向こうにいる物言わぬ透明人間たちに向け、番組を作ることである。
テレビや雑誌が取り上げたり、インターネット上で発言する人はごく一部で、その他の「透明人間」の方が圧倒的に多く、巨大なマーケットを形成している、ということをしっかり認識し、その人たちに発信して伝えていくことが巨大なマーケットを制するために重要なことです。
テレビや雑誌などが言うことに疑問を持つ力を養える本でもある
この本ではそのような「透明人間」に関する役立つ話がある一方、自画自賛的内容や、ツッコミたくなる要素もかなりあります。
例えば、『透明人間は、関ジャニ∞より本当は木村拓哉が好き』と言って、「キムタクのドラマは毎回視聴率が20%超える」といいつつ、それは別に「透明人間は、主役に興味ない」のに、メディアが盛り上げるから「祭りに乗り遅れないようにする」という心理があるからとりあえず見る訳で、「大事な人からの携帯電話がかかってきたら電話する」くらいでしか見てないでしょ、とか。
『透明人間は歴史の分岐点で間違える』という項目で、「透明人間はバブル崩壊が見破れなかった」と言っていますが、これも「透明人間は、偉い人の意見になびく」ということで、テレビや新聞などで経済評論家や経済アナリストの意見をとりいれたことによるもので、バブル崩壊後に「○○が悪い」「××のせいだ」と犯人探ししてあおったのもメディアではないでしょうか。
このような、突っ込みどころも満載で、「お前が言うな」的な所も多くあります。テレビや新聞、雑誌などのマスメディアの言うことを鵜呑みにせず、疑問を持つ力を身につけるのにも役立つ一冊です。
前作同様、サラサラっと読めますので、業界用語で疲れた頭を休めつつ読んでみてください。