近い将来お金の価値がなくなる!? お金だけでは満たされない欲求について考える

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今、「今、日本で起きていることの傾向と対策。 | カジケンブログ」という記事が話題になっています。

グローバリゼーション、デジタル化による既存産業の変革、そして貨幣そのものの価値下落により、今までの価値観が崩れ、社会が大きく変わっていく、というものです。

特に『「お金」があれば満たされる欲求』について、その価値が大きく変わることを、マズローの欲求段階説を用いて説明されていました。結論として、「お金では満たされない欲求がある」とのことでした。

この点について、別の理論で考えてみました。

マズローの欲求段階説を修正したアルダファーの「ERG理論」

先の記事でも紹介されている「マズローの欲求段階説」は、以下のようなモデルとなっています。

マズローの欲求段階説

  • 5.自己実現の欲求(self actualization)
  • 4.承認の欲求(esteem)
  • 3.所属と愛の欲求(social need/love and belonging)
  • 2.安全の欲求(safety need)
  • 1.生理的欲求(physiological need)

現代の日本において、水や食料、睡眠などを求める「1.生理的欲求」、安心して休める住居などを求める「2.安全の欲求」は満たされており、今は「3.所属と愛の欲求」が特に注目され、今後より一層重要になるとされています。

しかし、その「所属」や「愛」の欲求を追い求めることや、先の記事内でも書かれている「お金があれば幸せになれるのでは?」という点については、説明しづらい点が残ります。

 
そこで、この欲求段階説では説明しづらい点を考える一つの参考になるのが、「アルダファーのERG理論」です。

アルダファーのERG理論では、人の欲求は以下の3階層であるとされています。

アルダーファのERG理論

  • 成長欲求(growth)
  • 関係欲求(relatedness)
  • 生存欲求(existence)

下の階層からみていきますと、まず「生存欲求」はあらゆるタイプの物質的・生理的欲望を含んでいるとされ、マズローの欲求段階説では「生理的欲求」と「(物質的な)安全の欲求」にあたります。

水や食料、睡眠、安全な住居に対する欲求に加え、この「生存欲求」には賃金、雇用条件や福利厚生などのフリンジ・ベネフィット、物的作業条件が含まれます。つまり、「『お金』に対する欲求」はここに強く含まれます。

 
次に「関係欲求」は家族や恋人、友人、近所の人、会社の同僚や上司、部下、そして、敵となる人など、自分にとって重要な他人との人間関係に関する欲求です。マズローの欲求段階説では「(対人的な)安全の欲求」、「所属と愛の欲求」、「(他者からの)承認の欲求」にあたります。

 
3つ目の「成長欲求」は、自分自身や自分の環境に対して創造的、生産的でありたいとする欲求です。成長欲求は、自分の能力をフルに発揮し、さらに新たな能力を得る必要のある課題に取り組むことによって満たされるとされています。マズローの欲求段階説では「(自分自身による)承認の欲求」、「自己実現の欲求」にあたります。

 
「欲求段階説」と「ERG理論」の仮説は、以下の点が共通しています。

  1. あるレベルの欲求の満足は、その欲求の強度ないし重要性を減少させるとともに、それより上位の欲求の強度ないし重要度を増加させる。
  2. 最高次の欲求(マズローの欲求段階説では自己実現の欲求、アルダーファのERG理論では成長欲求)だけは満足されても、その強度ないし重要度は減少せずに、逆にさらに増加する。

 
この2つの共通する仮説の上に、ERG理論では以下の2つの仮説が追加されており、欲求段階説より複雑なものとなっています。

  1. 各欲求は、必ずしも逐次的に発現するのではなく、同時に発現することもありうる。
  2. 上位階層の欲求の満足の欠如は、下位階層の欲求の強度ないし重要度を増加させる。

 
つまり「生存欲求」と「関係欲求」が同時に起こることもあり、また「関係欲求」が満たされないと満たされたはずの「生存欲求」の欲求が強まる、ということです。

 

「お金」がないと「仲間」に対する欲求は起こりづらく、
「お金」があっても「仲間」から認められないと、より「お金」を求める

この複雑さについては「ERG理論の7つの特命課題」として、以下のように説明されています。

  1. 生存欲求の満足が低いほど、それはより一層希求される。
  2. 関係欲求の満足が低いほど、生存欲求はより一層希求される。
  3. 生存欲求の満足が高いほど、関係欲求はより一層希求される。
  4. 関係欲求の満足が低いほど、それはより一層希求される。
  5. 成長欲求の満足が低いほど、関係欲求はより一層希求される。
  6. 関係欲求の満足が高いほど、成長欲求はより一層希求される。
  7. 成長欲求の満足が高いほど、それはより一層希求される。

簡単な例で説明すると、以下のようになります。

  1. 安心して暮らせる生活環境や満足な仕事、十分なお金得られていないと、それらをより多く求める。
  2. よい人間関係が築けていないと、(その下の階層の欲求にあたる)食べ物やお金などをより多く求める。
  3. 安心して暮らせる生活環境や満足な仕事、十分なお金が得られていれば、よりよい人間関係を求める。
  4. よい人間関係が築けていないと、より一層、人間関係をよくすることを求める
  5. 自分のやりたいことに満足できていないと、(その下の階層の欲求にあたる)人間関係をより一層良くすることを求める
  6. よい人間関係が築けていれば、自分のやりたいことを求める
  7. 自分のやりたいことに満足できていると、より一層、自分のやりたいことを求める。

アルダファーのERG理論は、マズローの欲求段階説に比べて階層は少なくなっているものの、それぞれの階層が影響しあうため、より複雑なものとなっています。

 
1の課題で安全な生活環境や満足な仕事、十分なお金が得られていないと、それらを満たすための欲求が強くなります。生活環境だけでなく仕事やお金に関する欲求も含まれるため、この時点では「お金があれば欲求が満たされる」状態にあります。

1の欲求が満たされると、一つ上の階層の「関係欲求」を求めます(3の課題)。よい人間関係が築けていないと感じると、人間関係を良くすること求めます(4の課題)

そして、よい人間関係が築けていないと感じる時に、一つ下の階層の「生存欲求」をより一層求めます。(2の課題)

この時、人間関係をよくしたいと思うと同時に、よりよい住宅環境や、よりよい仕事、より多くのお金を求める、ということになります。

 
ここが「お金がないと欲求を満たせないが、お金があれば欲求を満たせる”とも限らない”」ということのポイントとなります。

まず、生存欲求を満たすため、十分なお金は必要です。十分なお金があれば、「生存欲求」は満たされ、1の課題はクリアとなりますが、「関係欲求」が強くなります。

そして先の記事の中でも書かれていた通り、お金があれば友だちを作ったり、相手から尊敬されたりするかというと・・・それはちょっとムリな話なのです。お金だけでは「関係欲求」を満たすことができません。

「関係欲求」が満たされないと、生存欲求がより一層強くなる、つまり、より多くのお金などを求めることになります。人間関係で満たされなかった人がお金儲けに走る、というのはこの仕組みによるものといえます。

 

生きていくための生活環境、望ましい人間関係が整えば、新たな欲求を追い求められる

生きていくために必要なお金を手にし、そして良い人間関係を築きあげていくことで、自分のやりたいことを求めていくことになります。

今の日本の社会は、日本中どこでも生きていくための生活環境は手にすることができ、安心して暮らしていくことが可能です。また、仕事についてはIT環境の普及によって、どこにいても仕事をすることが可能になってきました。

「生存欲求」を満たすため、十分な水と食料、安全な住居があり、日用品・生活用品とインターネットなどの通信費、そして税金を支払うだけの収入が得られれば、どこでも好きな所で生活するというスタイルが広がっていくかもしれません。

 
街によっては転居助成金や転居補助が出る自治体があり、住居へのコストを抑えることができそうです。農業や漁業が盛んな街なら安く食料品も手に入るかもしれませんし、何なら家庭菜園レベルで自宅で作り、ご近所の人と交換するという方法もあります。

家電やパソコン、日曜品・生活用品もネット通販で最安値のショップで買えば実店舗より安く済ませられることも多くなってきました。

あとはその他必要なものや嗜好品、雑費等の生活費、税金などを稼ぐ能力があれば、どこでも生活ができるでしょう。

極端な話、住宅費や物価の安い場所に住み、米や野菜などを自分で作り、あまったら近所の人があまらせているものと交換し、その他必要となる生活費・税金だけ稼げれば、満足な暮らしが送れる、という今まで夢物語であったことも現実味を帯びてきているのかもしれません。

 
人間関係においては、インターネット、ブロードバンド、ケータイ・スマートフォンの普及より重要度がとても高まりました。対面でお付き合いする人との関係に加え、インターネットを通じて交流する人々との関係をもよりよくしていく必要があります。

先に書いたように、日本中どこでも生活することが可能なため、人の多い都会に住むか、人の少ない地方に住むか、そして、実際の交流と、インターネット上での交流の度合いをどの程度にするか、選択の自由は広がっています。

都会に住んで多くの人と交流しつつ、ネット上でも世界中の人と交流をするのもいいでしょう。地方に住んで街の人と交流しながら、ネット上では友人・知人と交流するというのもありです。

そのような自分にあったスタイルを探すとともに、まずは、

  • 自分の理想の生活環境とは?
  • その生活を実現し、続けるために必要なお金はいくらか?
  • 家族・恋人・友人・会社の人たちとの理想の関係は?
  • 自分がこれからやりたいこととは?

これらのことを考え、それを一人一人が形にしていくと、今、日本で起きていること、そしてこれから日本で起こっていくことに対応しながら、理想の生活を送るための道筋を見えてくることでしょう。

 
参考)「欲望」はマイナスのエネルギーじゃない - @IT自分戦略研究所

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