劇的3時間SHOW 弘兼憲史さんのマンガに対する話を聞いてきた

NO IMAGE

10月10日に青山のスパイラルホールで開催された「劇的3時間SHOW」に参加してきました。
この日の出演者は漫画家の弘兼憲史さん。「課長島耕作」シリーズや、中年の恋愛を描く「黄昏流星群」などの作品で有名な方です。
第1部は弘兼さんのマンガに対する雑感や、実際のマンガ制作の実情について。第2部は「昔の歌謡曲や映画にツッコもう!」というネタ企画。
第1部だけでかなりのメモの量になったので、数回にわけて投稿します。

西郷輝彦さんの歌で登場

15:30 受付開始、17時開演というスケジュールで、私が会場に到着したのが 16:15 頃。
「ちょっと遅いかな?」と思いながらも受付を済ませてもらった席の番号は「E列の9番」。入場すると、なんと席がステージ正面のブロックの2列目でした。開演の時間になると、150ほどの席はほぼ満席状態。
17時を10分ほど過ぎて開演すると、西郷輝彦さんの「星のフラメンコ」が場内に響き渡り、スモークの中から弘兼さん登場。
「なぜ、西郷輝彦さん?」と思ったが、弘兼さんと西郷さんと同級生(62歳) で、「黄昏流星群」の各ストーリーのサブタイトル「星」や星に関する言葉が入るため、BGMとして採用したとのことでした。

マンガは今や一大産業

第1部の最初は、弘兼さんの「マンガに対する雑感」について。

デビュー

漫画家としてデビューして30数年。大学時代は「あしたのジョー」や「巨人の星」などを読んできた。

弘兼さんは、1974年『ビッグコミック』の「風薫る」でデビュー。今年で35年になります。

コンテンツ産業について

マンガや小説、映画、音楽、ゲームなどをまとめて「コンテンツ産業」といい、現在コンテンツ産業は10兆円とか、20兆円市場と言われている。

マンガは今や、日本が誇る一大産業と言っても過言ではない。今後、マンガも世界に誇る日本の産業として、「知的財産権」をしっかり管理していかなければならない。

経済産業省の調べによると、2005年の日本のコンテンツ産業は13.7兆円。そのうち、マンガの市場規模は5000億円となっています。

コンテンツ産業政策?政策?経済産業省 »

マンガが広まった3つの要因

今のマンガの形が広がったのは戦後のこと。現在のマンガの形が広がったのには3つの要因がある。

  • 「手塚治虫」(作家) – 手塚治虫という作家による作品だけでなく、彼を慕って集まった藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫などの「トキワ荘」の面々の功績が大きい。編集者もトキワ荘に行けば良かったので集まりやすかった。
  • 「団塊の世代」(読者) – 当時のマンガは高価な月刊誌の回し読みが主流だった。そこに、安い週刊マンガ誌の登場し、一気に普及していった。
  • 「大手出版社の参入」(出版社) – 海外ではマンガ雑誌を出すのは小さい出版社が多かったが、日本では講談社、小学館、集英社などの大手出版社がマンガ雑誌を創刊した。

「作家」と「読者」と「出版社」の3者が成り立って、日本のマンガ業界は発展してきた。

今後について

今後は50代、60代をターゲットとした「シルバーコミック」が出てくるのではないか。今の50代、60代は小さい頃からマンガを読んできているので、マンガを読むことに抵抗はない。老眼なども身体的な問題も、活字を大きくすれば問題ない。

課題は、読者層に合わせた漫画を書ける漫画家がいるかどうか。やはり、20代の漫画家が、60代向けの漫画を書くのは難しい。

50代、60代を対象としたマンガ、というのは面白そうです。現に「黄昏流星群」は中年の恋愛を描いており、50代の読者が多いとのことです。

「島耕作」シリーズについて

「島耕作」シリーズは、マンガの進行と現実時間の進行が同じ。なので、時間がつつにつれ、島耕作を社長にしなくてはならなくなった。

主人公がいつまでも「課長」のまま、というのは難しいものです。

「社長」になってむずかしいことは、社長の仕事の成果が現れるのは5年後とか、10年後のこと。常に風呂敷を広げながら進めなければならないのを描くのは難しい。

現場で働く人では触れることのできない「社長の仕事」というのをマンガを通じて感じられるのは、ありがたいですね。

島耕作は「エンタメ50%、情報50%」。嘘は書けないのでしっかり現地取材はする。中国編の時は現地の工場も観に行くし、ロシア編の時も実際に見にいった。

「島耕作」シリーズは、現実の社会の動きに則した内容が多く盛り込まれているので、時事問題を知るのにも役立ちます。

「黄昏流星群」について

「黄昏流星群」は50代、中年同士のラブストーリー。50代、60代の方に多く読まれている。60代になっても「恋心」とは消えないものである。

50代、60代になってもなお、若い頃と変わらず「恋愛したい」という気持ちはある、というのは、一つ勉強になりました。

人は恋をすることでリンパ球の一つである「NK細胞」(ナチュラルキラー細胞)という免疫細胞が活性化される。これは大声で笑うことでも活性化される。

きちんとしたデータが見つけられなかったのですが、NK細胞を活性化させるには笑うことの他に、喫煙を控える、バランスの良い食事ををとる、飲酒は適度に、良質の睡眠を取る、ストレスをためない、ということで活性化されるとのことです。

「大人の恋愛」という内容の特性上、ベッドシーンが絡んでくるが、その際に中年女性の裸を書くために資料が必要となる。そして、編集部にはきちんとそれらの資料がある。熟女物の写真集、野村沙知代さんの写真集とか。

さすが、出版社にはどんな資料でも準備されています。
次回は、弘兼さんのマンガの作り方について。

イベントカテゴリの最新記事