北海道の人気ローカル番組「水曜どうでしょう」のおもしろさに、
臨床心理学の側面から迫った一冊。
今まで「おもしろいんだけど、どう説明したらいいかわからない」
と思っていたことについて、一つの答えが示されています。
臨床心理学の先生が、藤村D・嬉野Dのインタビューを通じておもしろさに迫る
著者の佐々木玲仁さんは九州大学大学院人間環境学研究員准教授。
専門は心理療法における描画法、臨床心理学研究法など。
会社勤めをされていた1997年に初めて「水曜どうでしょう」を見て、
徐々に番組に引き込まれていき、京都の大学院で勉強されている際に、
「どうでしょうリターンズ」が放送され、ハマってしまったそう。
そして、京都の大学に臨床心理学の先生として就職され、
「事例研究」が「水曜どうでしょうの作り方に似ている」と思われ、
藤村Dにアポイントを取って、講義で話してもらい、
藤村D・嬉野Dと3人で学内イベントまで開催され、
そしてインタビューをまとめて出版されたのがこの本です。
水曜どうでしょうのおもしろさの秘密は「体験」
この本で書かれている、「水曜どうでしょうのおもしろさ」について、
一言で表すとすれば、以下の一文になります。
私たちは「水曜どうでしょう」を見ているのではなく、「水曜どうでしょう」を「体験している」んです。
「水曜どうでしょう」は、”旅”をメインとしたバラエティ番組ですが、
グルメや観光はほとんどありません。
大泉洋・鈴井貴之(ミスター)と、藤村・嬉野の両ディレクター、
計4人がひたすら移動しているの見るのがほとんどで、
「旅番組ではなく、移動番組だ」と一部で言われています。
しかし、「4人と一緒に旅をする(移動する)」ように作られていることで、
視聴者にとって「体験する」ことにつながり、出演者やファン同士で
「体験を共有する」ことになり、水曜どうでしょうの人気につながっている、ということです。
そして、その「4人と一緒に旅をする」ように感じさせる
番組の(映像の)作り方について、臨床心理学の側面から解説されています。
実際に読んで、臨床心理学の側面から見た水曜どうでしょうのおもしろさについて、
「なるほど」と頭では納得できました。
しかし、この水曜どうでしょうのおもしろさを他でも再現できるかと言われると、
難しいでしょう。やはり、「4人で旅をするからこそ生まれるおもしろさ」
というのがあっての「水曜どうでしょう」なのだと改めて思いました。
「水曜どうでしょう」のおもしろさの感じ方は人それぞれですが、
このように臨床心理学の面から考えるというのも楽しいですね。
この本で「水曜どうでしょうの作り方」を知ってから、
また水曜どうでしょうを見ると、また違ったおもしろさが見えてくるかもしれません。