『裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記』

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私は彼女の 10分の1 くらいでも、精一杯生きているだろうか。

株式会社マザーハウス 代表 山口絵理子 さん。

途上国発のブランドを作るべく、「黄金の糸」と呼ばれるジュートを使ったバングラデシュ製のバッグを生産し、日本で販売。

途上国支援とはいえ「お情け」ではなく、他の世界的なメガブランド商品と同じように「いつも使ってもらえるバッグ」という、バッグとしての対等の価値を持つブランドにすべく活動されています。

決してあきらめず、前に進む

小学校でいじめにあい、一時不登校に。中学校で非行に走るも、姉の影響で柔道を始め、最初の試合であっさり負ける。その後、努力を重ね県で1位になる。

高校は女子柔道部がなかった大宮工業高校に進学し、説得の末入部を認めてもらう。2年間壮絶なしごきに耐え、3年の時に県大会で優勝、全国大会で7位に輝く。

その後、猛勉強の末、慶應義塾大学総合政策学部に合格。竹中平蔵ゼミで開発学という学問に出会い、発展途上国の経済成長理論を学び、途上国援助に目覚める。

大学4年の春に途上国の開発援助を行う国際機関のインターンに選ばれ、ワシントンで働くも、途上国の現場、実情を知ろうとしない状況に矛盾を感じる。そして、「アジア 最貧国」で出てきた国、バングラデシュに向かう。

バングラデシュで実際に目の当たりにする腐敗と格差。目の前で交通事故にあった女の子のために、警官に救急車を呼ぶように頼むもワイロを求められる現実。

そんな中で一つのバッグと出会う。それが「黄金の糸」ジュートとの出会いだった。
ジュートは光合成の過程において、通常の植物の 5倍〜6倍の二酸化炭素を吸収する。

また、焼却処分しても、環境に有害な物質を一切排出せず、土に埋めた場合はバクテリアによって「完全に」分解される。環境に優しい素材である。

この「ジュート」を使って、日本で販売されている多くのブランドと同じように「このバッグ、カワイイ!」と言って買ってもらえるバッグを作るべく、バッグ作りでの起業を決意する。

そこから先も、幾多もの苦難が訪れる。

工場探し、製品を作ることの考え方の違い。何度も騙され、何度も裏切られる。それでも前に進み続ける。

彼女自身もバッグ作りを学び、バングラデシュで製品を作り、日本で販売してくれるお店を探す。

最初に作った製品が日本で完売し、これから本格的なスタートと思われた矢先に訪れた絶望。しかし、そこでも諦めなかった彼女に希望の光が差す。

今、マザーハウスのバッグは直営4店舗、そして三越や東武など、全国で販売されています。

そして現在、バングラデシュだけでなく、ネパールでのバッグの生産が始まろうとしている。

「社会起業家」ではなく、真の起業家

ここ数年、「社会起業」という言葉が広まりつつある。

「目先の利益にとらわれず、社会貢献、社会への利益の還元を掲げ、活動を行う」企業のことである。

しかしその実情は、環境活動や高齢者介護、育児支援、途上国支援を内容とするも、これまでと同じく、営利を追求する企業と変わらない。

企業として、利益を出さなければ活動していくことは難しい。そして、環境活動や途上国支援などの社会活動は営利に結びつきづらい。

結果として利益が出せず撤退する企業が多く、一方で「社会起業」という表面だけを用いた営利活動を行う所もある。企業活動として利益を出すことと、社会活動を両立できている所は少ないのが実情だ。
それでも徐々にではあるが、本当の社会起業家も増えてきている。『週刊ダイヤモンド 2009年4月11日号』の特集「社会起業家 全仕事」に掲載されている人は、本当の社会起業家と認めれている人たちが多く紹介されている。

山口さんのマザーハウスももちろん紹介されている。2008年の売上高1億2000万円を超え、2009年は2億5000万円、2010年は7億円を目指しているとのこと。

将来的には途上国一ヵ国に月一商材の製造を目指し、夢は「途上国と先進国を逆転させること」と書かれていた。

もともと、企業活動の本来の最終目的の一つは「社会への利益還元」であり、「社会企業家」という言葉自体、おかしいものであると思う。

その意味で、山口さんは「社会起業家」ではなく、本当の「起業家」である。
山口さんの絶対に諦めず、常に前進し続ける行動力に感動し、そして見習わなければならない。山口さんに負けないようにしなければならない。

山口さんと同じくらい、いや山口さんの半分、3分の1でも行動できれば、必ず成果は現れ、目の前の世界は変わる。
そして、その時改めて、山口さんの素晴らしさを知ることができる

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