インターネット上でのコミュニティサイト、CGMなどのサービスに携わっている8名の方による、Webコミュニティの運営方法やリスク対策など、大切なことをそれぞれまとめられている一冊。
8名の方がそれぞれのサイト運営経験を通じて得たものを書かれているのでとても実用性が高く、これからWebコミュニティサイトの構築、運営を考えられている方にはぜひ読んでいただきたいと思いました。
書籍は以下の7章から構成されています。
- スタートから成功までの目標とプロセス
- リスクマネジメントの必須項目
- ユーザーモチベーションを高める運営術
- Webコミュニティにおける収益モデルの考え方
- ECと集合知の融合 ?ソーシャルコマースの潮流
- モバイルコミュニティの可能性
- コミュニティビジネスの未来
巻末付録として、著者の一人の「けんすう」さんと「ひろゆき」氏とのインタビューが収録されています。
私は仕事柄、「chapter 4 Webコミュニティにおける収益モデルの考え方」と「chapter 5 ECと集合知の融合 ?ソーシャルコマースの潮流」がとても参考になりました。
これからのネットショップで考えたい、EC(小売販売)以外の収益モデル
「chapter 4 Webコミュニティにおける収益モデルの考え方」を担当された平尾 丈さんは、Webコミュニティの収益モデルとして、独自の『CREAM』メソッドというのを紹介されています。
その『CREAM』メソッドの項目は以下の5つから構成されています。
- Commission(有料課金)
- Rights(著作権)
- E-Commerce(電子商取引)
- Advertisemnet(広告)
- Marketing(マーケティングデータ)
ネットショップは3番目のE-Commerceの部分を特化したウェブサイトということになります。
Amazonの取扱商品ジャンルの拡大、イトーヨーカドーやアスクルなどの大手参入、ブランドショップの独自店舗構築など、大企業がECサイトを構築してきており、中小規模のネットショップはより自店舗の強みを伸ばしつつ、EC以外の収益モデルも検討する必要もあるのではないかと思います。その一つとしてネットショップのWebコミュニティサイト運営による収益モデル構築も考えられます。
店舗のコミュニティサイトを提供し運営することで、お客様同士の交流、店舗とお客様とのコミュニケーションを深められます。お客様の要望の声を聞いて情報交換を行ったり、会員顧客の限定サービスを提供したりできることも考えられます。
では、実際にネットショップでコミュニティサイトを構築して運営すれば、新たな収益モデルが出来上がるかというとそう簡単なものではありません。
まず、店舗と顧客という関係は変わらないため、店舗側からのアプローチはほぼ「売り込み」と認識されてしまいます。提供するサービスにおいても、有料課金はよほどのメリットが感じられないと利用してもらえませんし、著作権ビジネスも考えにくいモデルです。
広告掲載を行うにも、競合他社に顧客が流れる危険性もあり、マーケティングデータも自店舗内では十分に活用できますが、外部に提供するということは、ネットショップにとっては致命的です。
サーバー管理費、システム管理費、サイト管理運営費、などサイト運営に掛かる費用に対する収益を見込むのは厳しいでしょう。
ネットショップにおけるWebコミュニティサイトの運営は、あくまでお客様に対するサービスの拡充方法の一つであり、結果として収益の柱であるECの収益向上につながっていくという姿勢のもと、運営することによって生み出される価値の高さの可能性は十分にあると思います。
独自にWebコミュニティサイトを構築するのはコストを考えた場合に割に合わないので、まずは店長ブログでブログ記事を更新したり、SNS内に店舗のコミュニティを作成したりして、お客様とのコミュニケーションを取れる場所を作ってやってみるのが良いかもしれません。