『成功はゴミ箱の中に―レイ・クロック自伝』を読みました

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表紙の帯にはユニクロ・柳井正さんとソフトバンク・孫正義さんが並んで立ち、『これが僕達の人生のバイブル!』というコピーが大きく書かれています。日本を代表する2つの企業のトップが「バイブル」と掲げるくらいですから、読む前の内容への期待も大きくなります。

“自伝”ということを見落としていました

柳井さんと孫さんとの対談なども含めた、386ページの中にどれほどのノウハウが詰まっているのかと期待して読んだのですが、『レイ・クロック自伝』という題名がしっかり書かれていることを見落としていました。

レイ・クロック氏の半生、マクドナルド兄弟との出会い、「マクドナルド」社の設立、フランチャイズシステムの確立と拡大……

その合間にレイ・クロック氏の恋人や家族についても書かれています。

マクドナルドの成功の秘訣・ノウハウを知りたければ対談を読もう

本編はレイ・クロック氏の自伝であり、「マクドナルドがなぜ成功したか?」という成功の秘訣やノウハウを期待して読むとちょっとガッカリしてしまうかもしれません。

レイ・クロック氏も本編で
『成功の秘訣といっても当たり前のことしかしていない。』
『失敗したことがないというわけではない。失敗したことだけでも一冊の本がかけるくらいあるが、誰もそんな内容を求めていないだろう』

と書かれています。読み手としては失敗例も紹介してもらい「なぜ失敗したか。どうすれば失敗せずにすむか」ということも学びたいのですが……

マクドナルドの成功の秘訣・ノウハウについては、柳井さん・孫さんの対談と柳井さんによる解説に書かれています。手っ取り速くノウハウなどを学びたい方は、こちらだけ読まれても良いかもしれません。

「レイ・クロック氏は、あえて悪役を演じている」というが……

ピアニスト、ペーパーカップ・マルチミキサーのセールスマンなどを経て、52歳でマクドナルド兄弟のハンバーガー販売システムに目をつけ、フランチャイズシステムを確立させたそのサクセスストーリーは素晴らしいものです。

レイ・クロック氏がいなければ今日のフランチャイズシステムはなく、世界中どこでも手軽に美味しいハンバーガーが食べられるということもなかったかもしれません。

ただ、レイ・クロック氏自身の生き方、特に家族におけるあり方については受け入れられない部分があります。人の妻に惚れ「お互いに離婚して一緒になろう」と伝え、最初に受け入れられないと落ち込んだあげく他の女性と結婚し、数年後相手から結婚しようと言われたら、離婚して一緒になるという、自分中心の行動をしています。

また、マクドナルド兄弟の販売システムに目をつけた時、マクドナルド兄弟はすでに十分な資産を持っていました。『繁盛している店舗と大きな庭ある家がある。これ以上何を望むというんだい?』という兄弟に対し、「絶対に成功する」として発展させたのですが、後に契約上などのトラブルにもつながりました。

飲食店の成功の秘訣は「地域密着型」か「多店舗展開」とされています。マクドナルド兄弟の「地域密着型」で「自分達の望む収入などを得る」という成功を満たしていることと、レイ・クロック氏の「フランチャイズシステムを確立させる」というものは相容れないものだったのかもしれません。

対談の中で孫さんが「レイ・クロック氏はあえて悪役を演じている」とおっしゃられていますが、「演じている悪役」という範囲では収まらない部分も多いような気もします。

レイ・クロック氏には感謝しつつ、次の世代を作っていく必要がある

「マクドナルド」の功績はフランチャイズシステムを確立させただけでなく、毎日の食事にファーストフードという文化をつくったこと、また高校生アルバイトなどの就労機会を作り出したこともあります。

ただ、マクドナルドの作り上げたシステムのデメリットも出てきています。「マクドナルドが出店できない場所はない。空き地が埋まったら、岩間の隙間を埋める」、「食べ物の好みは3歳までに決まる。こどもにマクドナルドの味を覚えさせ、大人になっても来店させる」という仕掛けの結果、好き嫌い・肥満・栄養の偏りなどが現れてきています。

マクドナルドが作り上げてきたシステムに学ぶところは非常に多くあります。企業として成長していくために学び、真似し、独自のスタイルを作り上げていくための非常に良い例です。

あまりにも巨大になりすぎたマクドナルドがカバーしきれないお客様の欲求について、私たちが新たな仕組みを提供し、マクドナルドのシステムも参考にして、新しいシステムを作り上げていく必要があるかと思います。

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