書籍『ヒトはなぜ太るのか?―そして、どうすればいいか』を読みました

ヒトはなぜ太るのか?―そして、どうすればいいか

科学、薬学、健康が専門のライターであるゲーリー・トーベス氏が、
ヒトが太る要因について生物学的な観点から、
10年の歳月をかけて書き上げられた一冊。

私たちはなぜ太るのか。
それは、ある一つの食べ物の成分を摂取することによって、
太る要因となる、あるホルモンの働きが促され、太ってしまうそうなのです。

「摂取カロリー>消費カロリー⇒太る」という神話がくつがえされた

私たちの多くは、食事によって摂取するカロリーより、
基礎代謝や運動によって消費するカロリーが少ないと太り、
摂取カロリーより消費カロリーが多くなるとやせる、と認識しています。

しかし、この認識が間違っている、という所から始まります。

 
その例として、まず「摂取カロリーが少ないのに太っている人たち」が、
紹介されています。以下は、その一部です。

1961〜63年:西インド諸島のトリニダード
米国の栄養学者のチームが、島では栄養不良が深刻な医学的問題型、肥満も同様であると報告する。25歳以上の女性のほぼ3分の1が肥満であった。これらの女性の平均カロリー摂取量は1日あたり2,000カロリー以下と推定され、これは当時、国連の食糧農業機関が健康な食事に必要と推奨した最低量よりも低い。

1960年:南アフリカ・ダーバン
ズールー族の成人女性の40%が肥満であった。40代女性の平均体重は175ポンド(約80kg)。女性は男性よりも20ポンド(約9kg)重く、4インチ(約10cm)背が低いが、彼女たちの方がたくさん食べているわけではない。研究者たちの報告では、過度の肥満者にはしばしば多数の栄養不足の症状が見られた。

1981〜83年:テキサス州スター郡
テキサス大学のウィリアム・ミュラーらが、その地域の1,100人以上のメキシコ人米国人の体重と身長を計測した。彼らの大部分が「農業や油田での労働に従事しているにもかかわらず」、30代男性の40%が肥満であった。また50代の女性の半数以上も肥満であった。

その他、イタリア・ナポリ、チリ、ガーナ、オクラホマなどの事例も紹介されています。
その多くにおいて、栄養不足な状況で、重労働であったにもかかわらず、
肥満である人の割合が高かった、というものです。

このことから、摂取カロリーより消費カロリーが少ない場合に太る、
ということに疑問が生じます。

 
また、「運動することでやせる」点について、
『持久力を高める効果がある』とする一方で、
『体重減少については、わずかに減っただけであった』とされています。

 

私たちを太らせるホルモン「インスリン」

私たちの身体は骨や筋肉、水分などで構成されていますが、
私たちを太らせる主なものは「脂肪」です。

そして、私たちの身体に「脂肪」を蓄積させるのは、
「炭水化物」である、ということなのです。

 
私たちの主な食事には「炭水化物」と「脂肪」が含まれています。

脂肪は消費されると、身体を動かすエネルギーを貯蔵するため、
脂肪細胞へと送られます。

炭水化物は消化されると、血液中にブドウ糖という形で現れ、
細胞はブドウ糖を燃焼させて身体を動かすエネルギーとして使われます。

ただし、血液中のブドウ糖濃度(血糖)が高まりすぎると危険であり、
急激な血糖の上昇に対応するために「インスリン」というホルモンが登場します。

 
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むスピードを速め、
それとあわせてブドウ糖を「グリコーゲン」という分子に変え、
一部は貯蔵し、一部を脂肪に変えて貯蔵します。

食事で食べた脂肪も、炭水化物からブドウ糖となり、
インスリンの働きによってグリコーゲンに変わった分の脂肪も、
同じように扱われます。

 
血液中のブドウ糖(血糖)が下がり、インスリンの濃度が下がると、
身体を動かすエネルギーが不足するため、貯蔵した脂肪を使っていきます。

ただ、インスリンはエネルギーが不足すると、より多くのエネルギーを
取り込むように信号を送るため、空腹を感じさせて、食事を促します。

そのため、間食などで食べる回数が増えたり、
食べる量が増え、また新たに摂取した脂肪と、
炭水化物から生成される脂肪を蓄積していきます。

その結果、どんどん体内に脂肪が蓄積され、
私たちは太っていく、という仕組みになっているそうです。

 
つまり、そもそもインスリンを分泌させる食べ物である、
炭水化物(と糖類、穀物類)の食べる量を制限することで、
インスリン濃度が上がらなくなり、脂肪が消費されるようになる、とのことです。

 

人によって太りやすい人と太りにくい人がいるのはなぜか

ちなみに同じ食事をとっていても太りやすい人と、太りにくい人がいるのはなぜか。
その理由は「ホルモンバランスによるもの」と、この本では書かれています。

一人一人、体型が異なっているように、
糖質を摂取することで分泌されるホルモンであるインスリンの量も一人一人異なります。
そして、そのインスリンの効き目も一人一人異なります。

分泌されるインスリンの量、インスリンの効き目が異なるため、
同じ食事をとっても太りやすさが一人一人異なる、ということです。

 

では、どのような食事がおすすめか

私たちの身体に脂肪を蓄積させ、太らせるのを避けるためには、
どのような食事にすれば良いか。

巻末の付録として、ライフスタイル医学クリニック デューク大学医学センターの
食事法が掲載されています。

ここで制限されている主なものとして、
穀粒、米、小麦粉、パン、パスタ、トウモロコシ、ジャガイモなどの複合炭水化物と、
白砂糖、黒砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、ビール、などの単炭水化物の糖類は、
避けるように書かれています。

肉類、魚介類、卵、野菜を主に食べ、
チーズやマヨネーズ、醤油などは量を制限して食べるとされています。
また、脂肪と油は食べられるとしています。

その他、コーヒーなどのカフェインの入った飲み物の制限、
アルコールは適量、とされています。

 
ただし、ここで紹介されている内容は、
「炭水化物の総量を1日20g以下に保つ」としており、
これはかなり厳しい内容となっています。

炭水化物制限、糖質制限食は、人によっては低血糖の症状が起こり、
めまいやふらつきなどが起こったり、女性の場合は生理不順が引き起こされたり、
糖尿病を患っている方の場合、ひどい場合は意識障害のリスクもありますので、
注意が必要です。

 

「炭水化物が私たちを太らせる」という事実を受け入れ、健康について考える

この本の「結末」の章は以下のように書き始められています。

 これはダイエット本ではない。なぜなら私たちが論議しているのはダイエットではないからである。過食や座りがちな生活ではなく、炭水化物が私たちを太らせるという事実を、あなたがいったん受け入れれば、体重を減らすために「ダイエットを始める」という考えや健康の専門家が「食事療法による肥満の治療」と呼ぶものは、もはや実質的な意味を持たない。今や、議論する価値がある唯一の話題は、原因である炭水化物(精製された穀物、デンプン類、糖類)を避ける最適な方法と、健康へのベネフィットを最大にするために他に何を行うかである。

炭水化物を制限する食事法、糖質制限食に関する書籍や情報は、
今、あらゆる所にありますので、参考にしてみてください。

  
「摂取カロリーより、消費カロリーが少ないと太る」という呪縛から逃れ、
「炭水化物(糖質)が私たちを太らせる」という事実を知ったことで、
健康な食事、健康な生活について、考えるよいきっかけになるでしょう。

 
ヒトはなぜ太るのか?―そして、どうすればいいか
ヒトはなぜ太るのか?―そして、どうすればいいか

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