【書評】「世界が恋した美人時計 大ヒットサービスが生まれたヒミツ」

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世界が恋した美人時計

「かわいい女の子が時間をお知らせしてくれる」というシンプルなサービス『美人時計』。

2009年1月1日にオープンした「美人時計」はあっという間に爆発的にヒットし、今や世界中で展開されている大ヒットサービスです。

『美人時計』の開発からヒットの経緯、創業者の中屋さんが代表取締役を退任するまで、後半には美人時計の運営を支える裏側などが書かれています。

「美人時計」大ヒットのポイントは”リピート”と”ハイブリッド”

中屋さんが「美人時計」を開発し、ヒットさせるまでの経緯として、以下のようなことを書かれています。

  • 収入を安定させる方法(新しい広告の形)
  • アイデアを作る方法(『アイデアのつくり方』)
  • 天才の技術から学ぶ
  • 他のインターネットサービスからヒントを得る(印象に残るサービスとは)
  • 懸念点も考える
  • 逆転の発想
  • マネタイズさせる
  • 長期的なサービスにする
  • ストーリーを作る
  • 世界を意識したロゴ制作
  • 複数のプロモーション手法

一見、「かわいい子が時間を書いたボードもっている”だけ”」と思ってしまうサービスでも、要点を掘り起こしていくと、多くのポイントが抑えられていることがわかります。

また、これらのポイントはウェブサービスだけでなく、あらゆるサービスを作るにあたって「あたり前」ともいえるポイントばかりです。いかに企画・開発にあたって、このような「あたり前」のポイントをしっかり抑えておくことの大事さにも、あらためて気づかされます。

多くあるポイントの中でも、私が「美人時計がヒットしたポイント」として思ったのは、以下の2つです。

「リピート」

「リピート」について、以下のように書かれています。

インターネットをする以前に、人が気にしている情報は何だろう? その情報に何かを絡ませたい。

調べるうちにテレビやインターネットでもっとも頻繁に更新されている情報を見つけました。それは「日付、天気、時間」でした。当たり前ですが、どれも人が一日を過ごすために必要な情報です。

「美人時計」がリリースされる前の2008年9月には『美女暦』がリリースされてヒットを得ていまいしたし、その後、天気バージョンの『美人天気』をはじめ、多くの類似サービスがリリースされています。

「ハイブリッド」

「時間」をベースにしたサービスをリリースするとして、それだけでは大ヒットさせるにはもの足らなかったでしょう。もう一つの「ハイブリッド」について、以下のように書かれています。

アイデアとは「既存の要素の新しい組み合わせ」という教えがありましたが、ハイブリッド(二つ、またはそれ以上の異質のものを組み合わせて一つの目的を成すこと)は、アイデアの調合で、斬新なものを想像するという考えでした。そのため時間とはまったく関係のない、もう一つの情報を組み合わせることにしました。
(中略)
その頃は、朝から晩までフィリアデザインに関わっていたスタッフとアイデア会議を毎日のように開き、五十以上のアイデアを貯めていたので答えはすぐにでてきました。
世界中の社会人男性が興味ある情報は、異性です。
(中略)
そんなことを話し込んでいくうちに、ユーザーとの距離感が近いであろう「素人の女性」というキーワードを時計とハイブリッドさせることにして、話はトントン拍子に進んでいきました。

「時計」に「女性」を組み合わせたサービス。一見、誰もが思いつくサービスですが、なかなか考えてみると難しいものです。

流行の運をいかにつかまえるか

美人時計が大ヒットした後、周囲から受けた声について、中屋さんは以下のように書かれています。

「美人時計は、思いつけば誰でもできた」
「流行ったのはまぐれだよ、運が良かったね」
そう耳にタコができるくらい言われました。確かに運には恵まれていましたが、運は流行るところに訪れるもの。その運に気づくことができるか? 摑まえられるか? 摑まえていかした結果が、よくみんなが口にしている運がよかったということ。

「美人時計」がヒットした最大の要員は、「流行の波に乗ったから」でしょう。

ただ、その波に乗るためには、十分な下準備が必要です。ただ単に「ウェブサービスが流行ってるから作ろう」、「これからは iPhone アプリが来るから作ろう」というのでは、何も起こりません。

流行の波をきちんとつかまえるためには、小さな努力の積み重ねが必要です。そして何より、実際に作る必要があります。そしてようやく、運ををつかむ権利を得ることができるのです。

「美人時計は運が良かった」と思われている方や、「オレも美人時計のようなシンプルだけど世界中でヒットするサービスを作りたい」と思われている方などは、ぜひ一度読んでください。

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