島田紳助『自己プロデュース力』で売れるための方程式を惜しみなく学ぶ

NO IMAGE

島田紳助「自己プロデュース力」

タレントの島田紳助さんが2007年3月にNSC(吉本総合芸能学院)大阪で行われた特別講義の内容。DVD『紳竜の研究』に映像で収録されている内容を書籍化したものです。

島田紳助さんなりのヒットの法則や売れるための方程式、そして M-1 グランプリの戦い方をお話されています。

「「本当の客」を見極める」

紳助・竜介が売れた理由の1つとして、それまで「お茶の間にいる全員」を笑わせなければならない、という風潮を壊した、ということが挙げられます。

 僕らが21回の出番の中で真剣にやるのは3回ぐらい。あとは、手抜きとは言わないけど、真剣にはやらない。
だって、朝早くの舞台で、おじいちゃんおばあちゃんばっかりの客相手に真剣にやっても無駄でしょう。

(中略)

その代わり、若い客が多い時はおもいっきりやりました。
そんなことをしたら本当はいけない。でも、そこにもやっぱり理由があるんです。
それは、「自分たちのターゲットは20歳から35歳の男だ」というもの。

 でも売れ出すと、劇場にキャーキャーキャーキャー女の子がつめかけるようになる。実はこれが邪魔なんですね。

「こいつらが、俺たちをダメにしていく」

相方には、いつもそう言っていました。

「こいつらはキャーキャー言って追いかけてくれて、一見、人気のあるような雰囲気をつくってくれる。こいつらは俺らにとってすっごい必要や。すっごい必要やねんけど、めちゃめちゃ邪魔や。こいつらが俺らをダメにしよる。こいつらを笑わすことは簡単やから、こいつらを笑わしにかかってしまう。その時、俺たちは終わる。」

(中略)

「漫才をやる時は、目の前に座ってる女の子じゃなくて、カメラのレンズの向こうにおる、コタツに入ってテレビを観てる兄ちゃんたちを笑わせにかかれ」

(中略)

自分たちの本当の「客」は誰か。それをしっかり認識しておくことが大事なんです。

商売でも「低きに流れる」というのは、短期的に売上を上げることはできても、長期的には続かないこととされています。
「自分たちの本当の「客」は誰か」をしっかり認識しておく、というのはとても重要です。

「「X + Y」の公式の確立」

さらにもう一歩踏み込んで、「ヒットする方程式」について書かれています。

 自分たちが誰を笑わせたいのか、どの世代のどんな人たちなのか、そのためにどんなネタをつくるのか、というのが、まず最初に考えるべきこと。
そのためには、とにかくたくさん漫才を観なくてはいけません。

 僕がよく言うのは、「X + Y」でものを考えろ、ということ。
「X」は自分の能力。自分は何ができるのか。これは自分にしかわからないのだから、自分自身と向き合って必死に探すしかありません。
「Y」は世の中の流れ。これまでどんなことがあって、いまどんな状況で、5年後10年後、それがどんんな風に変わっていくのか。これは資料が揃っているんだから、研究することでわかってくるはずです。

 この公式は、長くやっている人なら必ず持っています。

(中略)

さんまだってそう。世の中の変化にあわせて、少しずつ自分を変えています。傍から見たら同じことをやり続けているように見えるかもしれないけど、売れ続けているというのは、気付かないくらいゆっくり変わっていっているということなんです。

自分の強み、武器を知り、時代を知ること。
そして、その2つを掛け合わせて、ブレイクさせるためにはどうすれば良いか考えること。
さらに売れ続けるために、時代を把握し続け変わり続けること。
とてもシンプルで、わかりやすい方程式です。

「テレビで絶対売れる「企業秘密」」

島田紳助さんはバラエティ番組だけでなく、情報番組などの司会もされています。それらの番組の司会、進行には幅広い知識や情報が必要になります。
では、そのような仕事をどのようにしてこなしていくか。その「企業秘密」とは。

「知っていることしか喋っていない」

本当にそう。僕は知っていることしか喋っていない。
でも、知っていることが一分野でも一箇所でも、人より深かったら、「何でも知っている」と人は勝手に思ってくれる。これがポイントなんです。

 僕たちタレントは野球に詳しくなる必要はない。野球マニアじゃないんだから。でも、詳しそうに見えなくてはいけないんです。
どうすればいいか? 東京であるトーク番組に出たとしましょう。その日のトークテーマは「プロ野球」。だけど、実は自分はそんなに野球に詳しくない。五人のタレントがいて、ひとりひとり好きな選手を訊かれる。そこでのベストの答えは?

「清原和博」とか「金本知憲」だと普通過ぎますよね。「そうなんや」でスルーされてしまう。でも、「阪神の藤本敦士(現在は東京ヤクルトスワローズ)」って言ったら。「何で?」となる。
東京だったら藤本ぐらいがちょうどいいでしょうね。微妙に知られてるぐらいのライン。これが大阪の番組だったら、「藤本」はメジャー過ぎる。「赤松真人(現在は広島東洋カープ)」ぐらいがいいかもしれない。東京だと「赤松」はマイナー過ぎます。東京なら「藤本」。
そうしたら、皆が「えっ、何で藤本なん?」と食いついてくる。そして、そこで藤本について熱く語るんです。

(中略)

そうしたら、皆、どう思う? 「こいつ、めっちゃ詳しい」と思うでしょう。実は詳しいのは藤本だけで、野球自体は知らなかったとしても。

(中略)

全体を知らなくてもいい、細部を熱く語るというトリックです。

 そりゃあ、1時間も喋ったらバレますよ。でも、残念ながら、テレビの世界というのは、ひとりの人間を1時間も喋らせてくれません。
この世界で、ひとりの人間に与えられるのは最大30秒。
それを超えたら誰も聞いてくれない。
どんなにオモロい話でも、30秒を超えたらスベっているのと同じ。
人は30秒以上集中できませんから。

 あとは、この詳しい一分野一箇所を増やしていったらいいだけ。
そりゃあ、300年ぐらい生きられるんだったらいろんなことを勉強するけどね。残念ながら、僕たちはすぐに死んでしまう。
それに、そんなことしてたら、いつまでたっても売れないですよ。
僕たちは賢くなる必要はない。「賢いんちゃうかな?」って思われたらそれでいいんです。

「「5の努力」をすれば「5の筋力」がつく」

有名な話ではありますが、M-1 は才能のある漫才師を世に広めるのではなく、辞めさせるきっかけのためにつくった、ということについても話されています。

 僕が M-1 を始めたのは才能のある奴に世に出るきっかけをつくるためじゃなくて、才能のない奴に辞められるきっかけをつくるためでした。10年やっていて2回戦レベルの奴はさっさと辞めた方がいい。

その上で、努力することの大切さについて話されます。

 例えば、才能に、通知表みたいに5段階あったとしましょう。
そして、努力にも。
もし、5の才能の人間が、5の努力をしたとしたら、5×5=25で最高の結果が出ます。

(中略)

3しか才能がなくても、5の努力を知っていれば、もっと上に行くことができるはずです。

 君たちの才能は「1」かもしれないし、「5」かもしれない。
でも、それは自分たちで得たんじゃない。親から与えてもらったもの、神様に与えてもらったもの。
だけど、努力は自分で覚えるものです。
誰でも頑張って「5の努力」をすれば、「5の筋力」を得ることができます。
それを得ることができたら、この世界が駄目でも、他の世界で絶対成功できます。

なぜか。この世界が駄目だったら、次に見つけた新しい世界に「5」をかける。それが駄目だったら、また次に見つけた新しい世界に「5」をかける。
そうやっていったら、そのうちにちゃんと自分に合う世界が見つかって、成功するんです。

「5の筋力」を持っているやつは時間がかかっても絶対成功する。

「5の努力」をする人は「5の筋力」がつく。そして「5の筋力」を持っている人は必ず成功する。
身近にいる尊敬する人たちもみな努力を惜しまない人、諦めない人ばかりです。

あくまでもこの本に書かれている内容、島田紳助さんが話されている内容は、NSCの生徒に向けた売れるための法則、M-1 で勝つための方法です。しかし、その中には私たちの仕事にも活かせることがたくさんあります。

今でも芸能界の第一線で活躍されている島田紳助さんのヒットの法則。一度、読んでおいて損はないでしょう。

書籍カテゴリの最新記事