『奇跡のリンゴ – 「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録』を読みました

奇跡のリンゴ

2006年12月7日に放送された、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀 – 農家・木村秋則」の内容が書籍となって出版されていました。
農薬だけでなく肥料も一切使わない、「絶対不可能」と言われていた無農薬無肥料の「自然農法」によるリンゴ栽培を実現させた記録です。

リンゴの無農薬栽培への挑戦

農業を継ぐことになった木村さんは、ある日、書店で福岡正信さんの『自然農法』という本に出会い、奥さんが農薬に過敏な体質であったこともあり、リンゴの減農薬栽培を始めます。
減農薬栽培である程度の収穫が得られたため「無農薬栽培」に挑戦します。
しかし、最初順調に花を咲かせ、大きく生長した葉も、病気にやられ、虫に喰われ、無惨な姿となってしまったのです。
ワサビやニンニク、しょうゆ、牛乳など、家庭にある食品や調味料で、農薬になるものはないかと、毎日試してもどれも上手くいきません。
周りの農家からも「絶対無理だから、あきらめて農薬を使え」と忠告されますが、聞き入れることはなく、人々をどんどん離れ、「カマドケシ」と揶揄されるようにもなっていきました。
リンゴができないため収入もなく、こどもに文房具さえも買うことができなくなっていました。

岩木山の山奥で見つけた「リンゴの木」

そして、六年もの歳月が経った1985年の7月31日、死を覚悟した木村さんは1本のロープを手に、岩木山を登り始めます。
2時間ほど登った所でいい具合の木を見つけ、ロープを枝に投げたがするりと抜けて飛んでいってしまいました。ロープを拾いにいった所で、木村さんは月明かりに照らされた「リンゴの木」を見つけます。
「なぜ、こんな所にリンゴの木があるのだろう」と思いながら駆け寄ってみると、実はドングリの木でした。
このような山奥で枝葉がしっかりと生長しているドングリの木を見て、木村さんが探し続けていた答えを見つけたのです。

今までどうして自分は、そのことを不思議に思わなかったのだろう。自然の植物が、農薬の助けなど借りずに育つことを、なぜ不思議に思わなかったのだろう。

木村さんはドングリの木が生えている、ふかふかで柔らかく、ツンと鼻を刺激する匂い。木村さんは山を駆け下り、この山の土を再現すべく土作りに取り組み始めます。
そしてついに7年目の初夏、何年も花を咲かせなかったリンゴの木が、畑一面に白い花を咲かせたのです。
秋には多くのリンゴがなり、それからまた試行錯誤を重ねながら、今では無農薬無肥料でのリンゴ栽培を実現させられています。

自然の中でどう折り合いをつけて生きていくか

この本では、木村さんのリンゴ栽培の仕方を通じて、私たちが生きていく中で、しっかりと考えたい言葉が多く詰まっています。

リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物も、そういうもんだと思い込むようになったんだな。

自然の中には、害虫も益虫もない。それどころか、生物と無生物の境目まで曖昧なのだ。土、水、空気、太陽の光に風。命を持たぬものと、細菌や微生物、昆虫に雑草、樹木から獣にいたるまで、生きとし生ける命が絡み合って自然は成り立っている。

肥料というものは、それが化学肥料であれ有機肥料であれ、リンゴの木に余分な栄養を与え、害虫を集める一つの原因になるということだ。(中略)運動もロクにしないのに、食物ばかり豊富に与えられる子供のようなものだ。

私たち一人一人も自然の中に生きており、様々な他の生けるものと深く関わりあって生きています。
また、ラクに生活を送ろうとする欲求を満たすために、余分な肥料を取り入れてしまっています。
また、木村さんが抱え解決してきた問題として、以下のように書かれています。

自然の摂理と人間の都合の折り合いをいかにつけるかという問題でもあった。折り合いのつかない部分が、虫や病気として現れていたわけだ。

エピローグにて木村さんは『自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。』と語られています。
あらゆる文明や技術、製品は、私たちの生活にはなくてはならないものであり、社会の秩序を保つために必要なものです。
しかし、自分たちの欲求にとらわれ、「自分たちだけで生きている」というエゴに満たされると、いずれ衰退してしまうことでしょう。
私たちの生活でも様々な所での折り合いのついていないため、自然災害や環境問題という形で現れているのではないでしょうか。
社会の成り立ちと自分の都合の折り合い、もっと大きな視点から自然の摂理と私たち一人一人の折り合いをつけながら生きていくことを考え、毎日の生活に活かしていきたいと思います。
▼奇跡のリンゴ–「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録

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